大阪地方裁判所 昭和39年(ソ)9号 決定 1965年3月23日
抗告人 中増義文
相手方 全鳳
主文
原決定を次のとおり変更する。
大阪簡易裁判所昭和三七年(ノ)第五六二号埋立工事代金請求調停事件の調停費用は右調停事件の申立人(本件相手方)の負担とし、その費用額を別紙第一計算書のとおり金四〇、八二三円五〇銭と確定する。
費用額確定手続に要した別紙第二計算書の費用金一、五六七円五〇銭は相手方の負担とする。
理由
抗告理由の要旨は、原決定が、
一、調停費用中、抗告人が七回の調停期日に出頭のため要した広島、大阪間の往復汽車賃は、一等運賃および一等急行料金であるのに、二等運賃しか認めなかった。
二、調停事件における疏第一号証の三、四(いずれも「回答」と題する書面)の提出費用(郵便料、書記料等)一五〇円を削除した。
三、同疏第六号証(訴状抄本)の交付申請書の印紙代、書記料計三五円を削除した。
四、費用額確定手続費用の中、住民票謄本交付請求に要した郵便料金二〇円を削除した。
五、同手続における疏第三号証(証明書)の交付請求書正副二通書記料三〇円を削除した。
六、昭和三八年(分サ)第一一〇八号事件につき昭和三九年九月二九日に予納した郵券五〇〇円中使用分三九〇円およびこれの提出に要した費用を削除した。
のは、いずれも不当であるから、これが変更を求めるというにある。そこでその申立の当否につき以下順次判断する。
(第一点の当否)
広島、大阪間の鉄道賃につき、急行料金の加算を求める部分については、右両地間の距離、右出頭当時における所要時間からして、通常人は両地間の往復に急行を利用するものと推測され、抗告人について特に急行を利用しなかったと断定する資料もないから、この申立は正当でありこの限りで原決定は変更されるべきである。
一等運賃の支払を求める部分については、抗告人が一等車を利用したことを疏明する直接証拠はなく、また調停期日の開かれた昭和三七年、昭和三八年当時、同人が一等車を利用したであろうと推測するに足る事情(その当時における抗告人の所得、地位、職業、健康状態など)の疏明もないから、通常人の利用する二等車の運賃をもって前記両地間の往復汽車賃とした原決定は相当である。
(第二点の当否)
これらの疏明資料は疏第一号証の一、二と重複証拠であるからその必要性にまず疑問があるし、のみならずかりにこれを肯定しても抗告人主張の費用の支出ならびにその額の疏明がないから、この申立は理由がない。
(第三点の当否)
疏第六号証は調停事件に関連性をもち疏明価値を有するものと認められるし、またそれが裁判所書記官が民事訴訟法第一五一条第三項に基づき発行したものであることは文書の様式から明らかであるから民事訴訟用印紙法第一〇条により二〇円の印紙をその交付請求に要したことが認められ、したがってその限度で抗告理由第三点は正当であるが書記料の請求の点については疏明がなく失当である。
(第四点の当否)
その主張にかかる郵便料金二〇円支出の疏明がなく、申立は理由がない。
(第五点の当否)
疏第三号証(証明書)は疏第二号証(住民票謄本)と重複しその必要性を欠くから申立は理由がない。
(第六点の当否)
本件記録に照らすと、昭和三八年(分サ)第一一〇八号事件(記録中にかような事件番号を以て表示されているが、昭和三九年(分サ)第八四八号の誤記と認められる)の予納郵券中三九〇円が使用されたこと、郵券予納のための書留郵便料として五〇円が使用されたこと、郵券予納、通知書半枚が右郵券予納の書留封筒に同封されていたことが認められるから、この申立は理由がある。
(職権判断)
原決定が費用額確定手続費用として第二疏明書正副二通四枚書記料六〇円を算入しているが、この書面は民事訴訟法第一〇〇条第二項にいう費用計算書に該当しないから、副本または謄本の提出は法律上要求されていず、したがって副本の書記料は費用額確定手続費用に算入すべきでないから一通二枚書記料三〇円と訂正する。
(結論)
以上の次第であるから原決定を変更することとし、確定手続費用については民事訴訟法第九六条、第九二条本文を適用して当抗告審に要したものは抗告人の負担とし、その余の第二計算書記載のものは相手方に負担させることとし主文の決定をする。
(裁判長裁判官 杉山克彦 裁判官 村瀬鎮雄 笹本忠男)